葉月:向日葵





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      ♪〜


軽やかな歌声が中庭に小さく響く。
天高くある同胞に呼応するように背を伸ばす向日葵がゆらゆら揺れた。
『ご機嫌だね、お姫様(プリンセス)。』
つい、と飛んできたツバメが歌声に声をかけた。
歌っていた少女が振り返ると、スカートがふんわりとそれに従う。
ツバメは警戒もなく少女の肩に飛び移った。
『誰かに贈り物?』
抱えられた大量の花にツバメが訊く。
「うん!皆にあげるの!」
同じ城に住まう愛し慕う人々を思うのか、にっこりと笑って少女は答える。
そしてツバメをお供にして花摘みを再開した。
『あ。その花を摘んでおくれよ。』
ツバメは、数百のそれの間を選び歩く少女から飛び立ち、一種の花の上でくるりと円を描いた。
イタリアンホワイトと呼ばれる品種に近い色合いの、それよりはかなり華奢な印象のそれを、少女は僅かに首を傾げながら摘む。
「これをどうするの?」
また肩に止まるツバメをきょとりと見つめ、少女は問うた。
『我らがお姫様に贈り物だよ!そろそろおやつの時間だろ?またな!』
ツバメは言い残して中庭の吹き抜けについ、と飛び去った。
ツバメ達に敬慕される少女は、レモンイエローの髪を僅かに揺らしながらツバメの去った空を見上げて満面の笑みを零した。
金髪碧眼の人形娘が庭の入り口から声をかけ、少女は花を抱いたまま走り出す。
その顔は笑み、夏にふさわしく光り輝いていた。



向日葵「愛慕」「崇拝」「光輝」