「ねね、これあげる。」
くいくいと服の裾を引っ張ったのはレモンイエローの小鳥。
夜明けより少しだけ早いこの時間は彼女の起床時間だ。
裾を引かれた方、蜂蜜色の髪の少女は差し出された小さな握り拳の下に手を差し伸べた。
しゃらしゃらと音を立てて手のひらに移されたのは綺麗な小石だった。
「キレイでしょー。」
にこにこと小鳥は少女を見上げる。
少女は煌々と様々な色に見えるそれを興味深そうに見つめ、ありがとう、と微笑む。
「アマンダおばさんのお店で見つけてね、おねぇちゃんにあげようと思って買ったの。」
小鳥は歌うように言った。
月が沈むのが遅い時分だけ顔を合わす小鳥は、少女が眠っている時間にも少女の事を思い出してくれていたのだと思うと嬉しくて、少女はふにゃりと笑った。
それにえへへ、と小鳥も笑う。そろそろ眠らなければ、朝が来てしまう。
月が出ている時間にしか起きていられない少女は外を眺めてそう思った。
「眩しい…」
陽光は今の少女には少し毒だった。
「もう寝ないと?」
小鳥はくるりと大きな瞳で少女を見上げる。
ん、と肯定の響きを乗せて答えたら、明るい声がおやすみを告げた。
また月が出るまで眠る自分にほんの少し寂しくなりながら、少女はベッドに潜り込んだ。
その枕元で、月の石の名を持つ宝石がカーテン越しの朝日を受けて小瓶の中、輝いていた。
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