青年は藍色がかった黒髪の少女を膝に乗せて、昼下がりの一時を楽しんでいた。
「    」
少女の唇が柔らかに名を刻む。
それは、どれだけ敬虔な信徒の祈りよりも甘美な響きだった。
二人以外は何もいない部屋で、ゆらゆらと夢現に彷徨う思考を少女が青年に触れる事で、青年は現実に繋ぎ留めていた。
「眠い、の?」
首筋に顔を埋めて甘える少女に問われ、青年は少女を抱え直す。
「少し、寝よ。」
少女はすり、と頬寄せて目を瞑る。
青年もゆるりと瞼を下ろし、今度こそ現実を手放した。



腕に破滅を抱いて神は眠る。