うららかな日差しの午後。
しゃんと背を伸ばし机に向かう女は、ふと気配を感じて窓を見た。
そこにはいつもと変わらない景色が広がるのみで、女は唇だけで嘲笑した。
ある筈がないのだ、あの気配は。
影はかの白き影に還ったのだから。
筆を置き、左手首をゆるりと撫でる。
人を殺めることがないようにと約した目に見えぬ糸は今もあるのだろう。
形見のようだと目を細め、女は紅の隙間から息を漏らした。
暖かな日溜まりは優しく女を包んでいる。
こんな日なら少しくらい眠るのも良いだろうと、女はそっと瞼を下ろした。



腕に影を抱いて神は眠る。