ソファに深く凭れて足を組む男は眠っているようだった。
眠りは男に夢を見せる。
それは願望なのかただの過去の再生なのか男には分からなかった。
そしてその甘さに嫌気が差して自ら引き裂いた。
浮上する意識。
目が覚めればやはりそれらは夢でしかなかった。
あの美しい桜の天使も、あの愛くるしい少年も今はいない。
男は煙草を切らしていた事に気付いて溜息を吐いた。
寝たい気分だが夢は見たくなかった。
「抱き枕になってあげよう。」
顔を上げれば近くで獣を枕にしていた刻の模造品。
返事も待たず膝に座り、ことりと肩に頭を預けられた。
「夢は見ないよ。」
確信に満ちた、しかし眠たげな声に安堵して男は目を閉じた。



腕に風を抱いて非天は眠る。