太陽が月の抱擁から逃れるように、その影から光を毀す。
その眩しさに目を、僅かに細めた瞬間、その視界が翳る。
唇が重ねられた、と知覚するまで天使はかなりの時間を要した。
そして、知覚しても、その唇を拒むこともなく受け入れる。
まるでそうすることが約束されていたかのように、二人にとっては当たり前の事だった。
そのときに、そうすること自体が。

太陽の光が再び、辺りを仄明るく染め始めた頃、一つの影は再び二つに分かれた。

「また、此処に来ますか?」

天使は問うた。
堕天使は何も言わなかった。
けれど、天使は微笑む。

「次の暁は、共に…。」

それは約束を問う言葉ではなかった。
ただの、確認だった。

堕天使は微笑み、天使は幸せそうに頷いた。


天からは太陽の光片が剥離していく。
神が、許したのか。
全てを、二人を、包むように。


相容れぬ筈の二人の、
禁じられた筈の恋を祝福するかのように。



世界は明るく、耀いていた。


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